俺の初めては母ちゃん、母ちゃんの初めては俺[前編]

近親相姦

〔体験談投稿者:Small Stone River 様〕

子供の頃、親に『ブランコ』をやってもらったことはあるだろうか。
父ちゃんと母ちゃんが左右にいて(別に親じゃなくてもいいけど)、子供が真ん中で、両手を左右から持ってぶら下げてもらう、アレだ。

俺には物心ついた時から、父ちゃんはいなかった。

俺と母ちゃんと古くて広い家、つまり母ちゃんの実家なのだが、そこに2人で暮らしていた。

日曜日、よく母ちゃんと近所の公園に遊びに行った。
すると両親と子供の3人連れとか4人連れ、という組み合わせに出会う。
俺は自分に父ちゃんがいないからといって特に何とも思わない。
友達の中には父ちゃんしかいない子もいたし、俺と同じように母ちゃんしかいない子もいた。
父ちゃんも母ちゃんも事情があっていなくて、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと暮らしている子もいた。

たまたま、公園で両親に『ブランコ』をしてもらっている子がいた。

(そうか、大人が二人いるとあれができるんだな)

俺はそう思ったが、自分もやって欲しいと思ったわけではない。

でも母ちゃんは、「ブランコ、母ちゃんだけだとできないな・・・よし、ウチに帰ったらもっと面白いの、やってあげる」と得意そうに言った。

「もっと面白いの?」

「そうだよ、お家帰ったらね」と笑った。

ウチに帰ると母ちゃんはまず床に寝た。
そして両手と両脚をまっすぐ上に伸ばした。
4本脚の机やテーブルを、天板を下にして床に置いた状態と思ってもらえばいい。

「母ちゃんの手のひらと足の裏に、乗っかってみて」という。

つまり俺は左右の腕のつけ根を母ちゃんの手のひらで、股関節あたりを母ちゃんの足の裏で支えてもらう。
そして自分の両手を広げ両脚をピンとまっすぐ伸ばす。
身体が小さく体重もまだ軽い子供だったから、それができる。
つまり俺が『飛行機』だ。

母ちゃんは高校時代、体操部で跳馬の選手をやっていたので、身体が柔らかい上に筋力もある。
そして手脚が長い。
身長は170cmあったのだ(今もある)。

母ちゃんは両手両脚で俺を支える。
俺は「右!」とか「左!」と言う。

母ちゃんがバランスをとっていた手や足を伸ばしたり縮めたりすると、俺は右に傾いたり左に傾いたりする。

「上!」と言えば母ちゃんは膝だけぐっと曲げる。

俺の飛行機は上を向く。

「下!」と言えば手をグイっと曲げて脚をピン!と伸ばす。

俺の顔は母ちゃんと鼻同士がくっつくくらい低くなる。

母ちゃんと俺はゲラゲラ笑う。
俺はいつももっとやって欲しかったが、母ちゃんもさすがにくたびれてくる。
そして母ちゃんが「墜落!」と言って俺をひょい!と上に投げ、手をバンザイし足を広げる。
俺の飛行機は無事墜落して(笑)俺は母ちゃんと向き合う、というか母ちゃんと抱き合うスタイルでバターン!と下りて終了だ。
母ちゃんはニコニコしてしばらく目を瞑っているのがいつものことだった。
そんな『飛行機』が楽しくて俺は大好きだったが、やってもらえるのもどうにか幼稚園までだ。

俺は小学校にあがり6年間で背が33cm伸びて、中学生になり背が母ちゃんに追いつき、高校生になって母ちゃんを追い越した。
それでも俺はどうにか178cmくらいだから、ヒールを履いたら母ちゃんと互角だ(笑)

買い物に繁華街に行ったときなど、母ちゃんはよく俺と腕を組んで歩いた。
別になんとも思わないし平気だ。
俺も母ちゃんも、“恥”の回路が他人とは違うのだ。
そんなことは“恥”ではない。

一度、高校のクラスで「お前、母ちゃんと手ぇ繋いで歩いてたろ」とからかわれたことがある。

「手なんて繋いでねえよ」

「見たヤツが言ってたぞ」

「手なんて繋いでない。腕は組んで歩いたけどな」

と、涼しい顔で答えてやった。

「マザコン」だと言うのもいたが、放っておいた。
マザコンとはいい歳をして親に威張り散らすとか、威張る癖に親がかりで暮らすとか、そういうのだろうと勝手に思っていた。

高校も3年になり、俺は受験する大学を決めた。
進路指導の教師は、「お前の学力なら、△△大学でも十分合格・・・」と近所の大学を勧めたが俺は希望を変えなかった。
そして入試を終えて、家から遠く遠く離れた大学に通うことになった。
近いも遠いもさして理由はない。
知らない街が面白そうだっただけだ。
母ちゃんは微塵も、寂しそうじゃない。
大学の名を言ったときも「へえ、その学校、どこにあるの?」と珍しそうだった。

「自分のことは自分で決めて、いつでも好きなときに、どこでも好きな場所に行って、なんでも好きなことをやって、自分の力で生きて、勝手に幸せになれ」

母ちゃんは事あるごとにそう言っていた。

「一人息子さんが遠くに行っちゃうって、寂しいね」と母ちゃんは自分の職場である図書館で言われたらしいが、「世界のどこかで生きてれば同じ、何が寂しいもんか」と内心思いつつも、「そうなんです、もう食事も喉を通りません」と言いながらお弁当をバクバク食べ、オヤツをムシャムシャ食べていたらしい。

俺は大学のある遠い街と自分の家を、入学手続きやらアパート探しやら転出転入で何度か行ったり来たりした。

下宿の部屋を決め、自分の最後の荷物を送る準備をしたら、後はもう大学の入学式だ。

「義務教育が終わったとき、親の義務は果たした」

母ちゃんは中学を卒業したときにそう言って笑い、高校なんて入学式も卒業式も俺は一人で済ませた。
自分の学校なんだから自分だけでいい。
当然、大学だって同じだから母ちゃんには日時だけ言い、「行ってくる」と伝えた。

すると母ちゃんが、「あたしも一緒に入学式に出たい」と言い出した。
俺は驚いた。

「母ちゃん一度も行ったことのない街だから、見てみたい。ついでに大学も話のタネに見物したい。いいでしょ?」と言うので、俺は「いいよ、別に」と答え、母ちゃんと一緒に出かけた。

アパートに着いても家具もなく、持ってきた最低限の荷物だけでガランとしている。
俺はレンタカー屋で軽トラを借りて、ガス台、小さい冷蔵庫、灯油ファンヒーターなどをリサイクルショップで買い、母ちゃんと一緒に運んだ。
母ちゃんが来てくれて助かった。
一人でも不可能じゃないが、小さくても冷蔵庫を運ぶのは一人じゃ難儀だったろう。
背が高く手脚が長い母ちゃんは荷運びに役立った。

母ちゃんは、「あたしを連れてきて良かったでしょ、ホラホラ」と言って嬉しそうだった。

アパートに風呂はない。
俺は母ちゃんと近所の蕎麦屋で天ざると鴨南蛮を夕食にして、風呂屋に行った。

俺は環境の変化を何とも思わないので特に感慨がなかったけど、母ちゃんは見るものすべてが珍しく面白そうで、ニコニコしてキョロキョロしている。
母ちゃんが腕を組んできたから、そのままいつも通り普通に歩く。

アパートに戻るともう暗かった。
そこで俺は大事なことを勘違いしていたことに気づいた。
電気の契約の開始が次の週からだったのだ。
水道は出るが、電気はまだ使えない。
ガスはまだ契約していないから煮炊きもできない。
日が暮れると本当に真っ暗だ。

「困ったね。まだ夜は寒いし。駅の近くのファミレスで朝までいようか」

母ちゃんは、「平気だよ。ちょっとガマンすれば大丈夫だよ」と言い、笑った。

幸い布団一式はアパートを決めた日に大家さんが新品を持ってきてくれた。
お金を払おうとしたら、親戚に布団屋がいるのだそうで、「いいから使って」と言われ、ありがたく頂戴した。
ずいぶん大きくて立派な布団だった。

母ちゃんは、「これなら大丈夫、一緒に寝よう」とニコニコした。

「まあいいや、もう寝ようか」

ほぼ真っ暗の中、二人で歯磨きした。
流しの前に鏡を置いたが、暗くてほぼ見えないのに二人して鏡をのぞき込むのがおかしくて笑ってしまった。

母ちゃんは俺の肩に左手をもたれさせてふざけて顎を俺の肩に乗せた。
子供のころ、背が高かった母ちゃんは見上げるほど高い位置に顔があるような気がしたが、今は俺の鼻あたりに母ちゃんの頭のてっぺんが来る。

ずいぶん母ちゃんは小さくなってしまった。

母ちゃんは俺のいる前でブラウスを脱ぎ、寝巻き代わりのスウェットに着替えてブラジャーも外した。
母ちゃんはさすがに家で裸でウロウロしたりはしないが、それは「恥ずかしい」からじゃなくて、「自分がマヌケに見える」かららしい(笑)
母ちゃんは昔から下着は黒とか紺ばっかりだが、それも理由は「面倒くさい」からだ。

俺は小さい頃から一人で家に帰ってきたら洗濯機を回して、終われば干して、乾いたら取り込んで畳んでタンスに仕舞っていたから、今さら母ちゃんのパンツもブラジャーも目新しくもない。
だけど、ほぼ真っ暗の、そしてまだ自分にも見慣れていないアパートの部屋に下着姿の母ちゃんがいる光景は何か不思議なものを見ているようだった。

一緒に布団に入ると、母ちゃんが「ねえ、子供の頃やってあげた『飛行機』憶えてる?」と言った。

「忘れてないよ、面白かったもの。俺が言う通りに急上昇したり急降下したり」

「最後は墜落」

母ちゃんが笑った。

「ねえ、母ちゃんに『飛行機』やってよ。お願い」

「俺が?母ちゃんが飛行機?重い・・・」

「黙んなさい。何が重いの。母の恩の重さよ。ね、やって。お願い」

母ちゃんはウキウキ楽しそうだ。
修学旅行のような感じだろうか。

俺は両手両脚を天井に向かって伸ばしてみた。

「この辺ね・・・足はこんな感じか・・・」

母ちゃんが、腕のつけ根を俺の両手にあずけ、足の裏は太腿の少し上あたりで体重を受ける。
「よいしょ!」と気合いを入れると、母ちゃんは手をまっすぐ左右に伸ばし、二本の足はちゃんとまっすぐ後ろに向いた。
さすが元体操部だ。

「アッハッハ、できたねできたね!ほら母ちゃんがしたみたいにやって、上~!」

俺はやっとのことで足を曲げたり伸ばしたり、手と足を同時に上げたり下げたり。
母ちゃんは、「右!もっと傾けて右!じゃあ左!アッハッハ面白い面白い!」とはしゃいだ。

さすがにもう支えられない。

ちょうど二人同時に、「墜落~!」と声が揃った。

俺は手と足の力を抜いた。
母ちゃんがそのまま落っこちてきて、俺に抱きつくように胸に顔をうずめた。

(飛行機の“墜落”も、とうとう母ちゃんと俺は上下が逆になったな・・・)

そう思うと少し感慨深い。

「男はやっぱり力、あるね。もう母ちゃんこんなことできないよ」

「あたり前だよ、俺だって汗かいたよ・・・」

母ちゃんは俺に抱きついたまま離れようとしない。

「母ちゃん、もう寝ようよ、あした入学式だし」

「ちょっとこうしてて・・・あした、終わったら母ちゃん帰るんだから・・・」

母ちゃんは目を瞑ったまま、顔を横に向けていた。

「心臓の音がする。もうちょっとこうしてて」

さっきから母ちゃんの腰骨が、まずいことに俺のオチンチンの位置に当たっている。
そして今日一日、まだあまり慣れてない車の運転やら大荷物の買い物したり運び入れたりやら、“やっと布団で横になって寝られる”という安堵と疲労とで、『逆朝勃ち』みたいな感じでモゾモゾするのだ。

「母ちゃん、こうしててもいいからさ、あの、ちょっとだけ上か下にズレてくれないかな、あの・・・」

「ちょっと、これ何?このゴツゴツ。母ちゃんと抱き合ってエッチな気持ちなの?ねえ?ねえ?」

母ちゃんは不敵な笑み、というか「見~た~ぞ~」とでも言いたげな、ニヤニヤというかあっけらかんとした顔で言った。
アパートの窓は結構な広さのリンゴ園(リンゴの樹が並んでいるから、“リンゴ畑”じゃないんだろう)に面していて、なんの灯りもない。
真っ暗だ。
母ちゃんは俺の耳の辺りを両掌で挟んで鼻の頭同士を一瞬、くっつけた。
そして俺にキスしてきた。

「母ちゃん、なんだよ。俺とキスなんかしたって・・・」

「いいじゃん、今日くらい・・・大好きな息子に次に会えるのいつかな・・・」

母ちゃんが俺に「大好き」と言ったのを聞いた記憶はない。
生まれて初めてかもしれない。

するといきなりポタリと、母ちゃんの涙が少し間をおいて俺の頬に落ちた。

俺はそんな母ちゃんが意外だった。
母ちゃんは少し頭の位置を下げて俺の首と胸の間あたりに顔を寄せて横を向いた。
母ちゃんが自分の太腿を開いて両膝で俺の脚を挟んで、腰をゆっくり、俺にぴったり沿わせながら少しずつ上に、少し下に、そして左右にゆっくり円を描くように圧しつける。

「オチンチン、硬いよ・・・硬くなったままだよ・・・。なんだか頼もしい。エッチなんじゃないの。頼もしくて・・・ドキドキする・・・」

母ちゃんは時々、苦しそうな切なそうなため息をついた。
そしてまたキスしてきた。
俺は別に平気だけど、これから離れて暮らす母ちゃんが少し愛おしくなってきて、今度は俺が母ちゃんの頭を抱えてキスした。
母ちゃんが舌を入れてきたので俺もやり返してやった(笑)

「母ちゃん、そんなにギュって・・・押さないでよ・・・」

「だって、オチンチン硬いままなんだもの・・・母ちゃんもなんだか・・・くっついてる場所が・・・あんたがオチンチン、引っ込めなさいよ」

「知らないよ。勝手になったんだよ。刺激されてピュっ、ってなったらどうするのさ」

「アッハッハッハ、アッハッハ、今日洗濯機買ったじゃない。母ちゃんが洗濯してあげようか」

男なら誰しも経験はあるだろうが、中学かそこら以降、『男子の(女子もか?)下着』の洗濯では色々、諸問題を乗り越えなければならない(笑)

「母ちゃん・・・今なんで真っ暗なのか忘れた?電気来てなかったら洗濯機はただの箱だよ」

「ああ、そうだったそうだった、困ったね」

またキスした。
まだ笑っている。

「ねえ、チコ・・・あのさ、セックスしようか。母ちゃんとセックス、しようよ」

「母ちゃん、俺と?」

「うん、チコとセックス、したいの」

母ちゃんは俺を「チコ」と呼ぶ。
友人や知り合いにもそう呼ぶのは何人かいる。
まあ、あだ名みたいなものだ。

俺の下の名前は「知行」というのだ。
100パーセント、「トモユキ」と読まれるし呼ばれるが、「トモユキ」ではない。
「チコウ」と読むのだ。

高校のとき漢文の教師が「お前、チコウか?知行合一・・・誰がその名前つけてくれたの?」と訊いた。

俺の名前を最初から正しく読めた数少ない存在だ(笑)
俺の名前をつけたのはその意味ではひいお祖父ちゃんだが、生まれたときにひいお祖父ちゃんはすでに亡くなっていた。
曾孫が生まれたときのことを考えて、『男の名前候補』『女の名前候補』が書かれた紙が遺品の中から出てきたのだ。
面倒くさがりだった俺の父ちゃんは、「考える手間が省けた」と言ってそのまま出生届を出した。
ひいお祖父ちゃんは軍隊で戦争に行って、戦後は大学で教鞭をとったこともあるから、きっと陽明学なんかにも詳しかったのだろう。

「母ちゃん、本当にどうしたの今日は・・・母ちゃんとそんな・・・俺のチンチン硬くなったからって、母ちゃんのことそんな目で見たら母ちゃんに悪いじゃん」

「だって・・・母ちゃんはホントは母ちゃんじゃ・・・ないでしょ、チコを命がけで産んだお母さんじゃないし・・・」

「そんなこと・・・一度も思ったことないよ。物心ついた時から母ちゃんが俺の母ちゃんだよ。・・・俺を産んだ母ちゃんのことは憶えてないし・・・」

「じゃあ、あたしが本当にチコを産んだ母ちゃんだったら何か違うの?」

「だったらそんな、わざわざ、鮭じゃないんだから、自分が生まれたとこに戻ってこなくていいよ、世界の半分、女性がいるんだから。その母親を大切にするのも、受けた愛を返すのも、山ほど別のやり方あるでしょ」

俺を産んだ母ちゃんは身体が丈夫ではなく、俺が2歳の時に死んでしまった。
残った父ちゃんたちは色々悩んで親戚たちに相談し、父ちゃんの叔父さんと叔母さんの家に俺を預けた。
その家の娘が、今の俺の母ちゃんだ。

「息子が小学校にあがれば、俺一人、父親だけでもどうにかできる。それまで頼む」ということだったのだけど、今度は父ちゃんがその次の年の冬、雪山で雪崩に巻き込まれ、命を落とした。

趣味や娯楽の山登りではない。
大学のとき山岳部だった父ちゃんの後輩たちがその山で遭難して、行方不明者が何人も出た。
父ちゃんは、「息子が一人前になるまで、山は休む」と言って登山は止めていた。
それでも仲間がたくさん行方不明になったとなれば家にいろというのはムリだと俺も思う。
父ちゃんは押し入れに仕舞っていた山の道具を出して、何人かの登山部OBと一緒に捜索隊に加わったのだが、そこに雪崩が起きたのだ。

俺はずっと後からポツリポツリと教えられただけだが、葬式の光景はおぼろげに憶えている。

それ以来、天涯孤独になるかもしれなかった俺を育ててくれたのが、今の母ちゃんと、今は亡きお祖父ちゃんお祖母ちゃんたちなのだ。

どういうわけか、俺の周囲の男性は早く亡くなったりする人が多い。
そして女性は元気で頑丈なのが多い。

「アッハッハ、そうだね、わざわざそんなことしなくても。アッハッハ」

さっき涙を見せたくせに、母ちゃんは「鮭」がおかしかったらしい。
それでも、腰にギュっと力をかけてぴったり、俺の形に寄り添う。

「ホントの母ちゃんと、父ちゃんが生きてたら、あたしはただの・・・チコの親戚のオバサンで、滅多に会うこともなかったかもねえ」

「・・・そうだね、考えると不思議だけど」

「ねえチコ、いいでしょ、お願い」

母ちゃんは一旦身体を起こし、トレーナーを脱いだ。
目をひくほど大きくはないけど、形の良いオッパイのシルエットが見えた。

「えへへ。もう脱ぐよ、全部」

布団から一度出て母ちゃんは立ち上がった。
スウェットの下とパンツを一緒に脱いだ。

(最後に母ちゃんの裸を見たのは中学に行く前くらいだったかな?)と、俺はぼんやり記憶をたどった。

背が高く脚も長い母ちゃんは今でもカッコいい。
少しお尻が大きくなったような気もするが、それはそれでまた可愛い。

「あっはっは、ちょっと、恥ずかしいな」

母ちゃんは両手を腰に当て背筋を伸ばし、窓の向こう、何も見えない真っ暗なリンゴ園の方を向いて大地を踏みしめるように立っていた。
俺はそれから以後の人生、まあ普通に何人かの女性と付き合ったしセックスもしたし、何人か、何度か、「恥ずかしい」という言葉も聞いたし意志表示もされたが、仁王立ちで大笑いしながら「恥ずかしい」と言ったのは後にも先にも母ちゃん一人きりだ。

裸になった母ちゃんは俺のそばで膝をついて手を俺の両肩の脇に置き俺を見下ろした。

「チコも脱いで。母ちゃんもう裸だよ」

「わかった、いいけど、でもさ・・・母ちゃんと“男と女”になっても・・・いいのかなあ」

「だって・・・だってさ、齢は母ちゃんが上だけど、あたし、チコと結婚だってできるんだよ・・・チコの父ちゃんだって、あたしのイトコだもの。結婚したって・・・」

母ちゃんは言葉を何か飲み込むような感じで黙った。
俺は直に訊いたりはしなかったけど、昔から“母ちゃんは俺の父ちゃんを好きだったんだろうな”と思うことはあった。
母ちゃんは子供の頃、「あたし、ノブヨシ兄ちゃんのお嫁さんになる!」と、事あるごとに言っていたらしい。
ノブヨシ兄ちゃんとは、俺の父ちゃんのことだ。

周囲の大人は少しだけ困って、「お兄ちゃんとは結婚できないんだよ」と諭した。
母ちゃんはガッカリして諦めたらしいが、少し学年があがり知恵もついてくると、4親等だし結婚もできるという事実を知る。

「大人ども、騙したな!」と憤慨していたと母ちゃんの叔父さんから聞いたことがある。

それでも母ちゃんはスッパリ諦め、父ちゃんと俺を産んだ母ちゃんの結婚式では連続側転と側宙(側転だけど手をつかない)を披露し大喝采だったそうだ。

母ちゃんは、「後悔なし、心配なし」というのが口癖だ。

「過去はもうない、未来はまだない」とも言う。

いつも、「いま」しかないのだ。
サバサバしていて細かいことに執着がない。
物事はパッと決め、サッと行動する。

だから俺を引き取って暮らすかどうか、皆が腕組みして考えている横で、「そうできるんだからそうしよう。手に負えなかったらそのときは放り出そう」と言い(ひでえな)さっさと色々な手続きを進めた。

俺は母ちゃんの両親と母ちゃんの戸籍に入り、つまり養子になった。
母ちゃんとは法律の上では姉弟なのだ。

たまに「姉弟です」と母ちゃんはふざけて大嘘をつくときもある(笑)
年齢はちょうど20歳離れている。

「そうだね、なんだか不思議だね、母ちゃんだけど姉ちゃんで、ホントは結婚もできるなんて、まあ法律の紙の上だけど」

俺もモゾモゾとジャージとトランクスを脱ぎ、トレーナーを脱ぐと母ちゃんが布団に入ってきた。
身体全体で母ちゃんの体温を感じる。
セックスなんて、どうでもよくはないが、こうやって裸で触れてもいいと思うなら同じではないだろうか。
俺はそう考えると可笑しくなって少し笑った。

「チコ、なんか思い出したの?」

「ええと・・・むかし町内会の草刈りの時さ、母ちゃんが、マリコ叔母ちゃんが寝巻き代わりに置いていったジャージ着たら小さくて、それ思い出した」

毎年夏に、町内会で草刈りがある。
住んでいる家は古くて大きいので敷地の周りの距離も長い。
母ちゃんは外仕事も好きなのだが、ジャージの方が動きやすかろうと叔母さんのジャージを履いたらサイズが小さい。
お尻がパツパツだ。
その下に履いているパンツの線がまるまる、見えている。

俺はさすがに教えないのもマズイと思い、「母ちゃん、パンツの線が見えてるよ」と言うと、母ちゃんは不思議そうな顔で振り返り、「え?何?パンツ?」と言った。

「うん」と答えるとなぜか母ちゃんはジャージを下ろし、パンツだけのお尻をこっちに向けるとペンギンかアヒルが歩く時みたいにお尻を左右にきゅっきゅっと振り、俺の顔を見て「こんな感じ?」と言った。

「ねえ母ちゃん・・・ナニやってんの。バカなの?」

「バカとは何よ。だってチコが『パンツ見せて』って言うから・・・。今さらどうしてあたしのパンツなんか見たいんだろう、って思って・・・」

「見せて、じゃないよ、パンツの線が“見えてる”って教えたんだよ。それ小さすぎるからさ」

「なんだ、そうなの?お尻まで振って損したな」

そんなことも、もう5、6年前だ。

「チコ、ねえ・・・女の人とセックス・・・したこと・・・?」

「ないよ。あるわけないでしょ、付き合ってる人もいないのに」

「ふうん・・・」

母ちゃんはほんの少し横を向いた。

ニヤニヤ笑って「ここでひとつ、重要なお知らせがあります」と言った。

(なんだろう。“ちゃんと避妊しないとダメだよ”だな。きっとそうだろう)

「ねえチコ、母ちゃん、実は男の人とセックスしたことありません」

(でえええええっ?)

俺は一瞬、どうしていいのかわからなくなり、布団から転がり出た。
そして小さい頃、母ちゃんから教わって鍛えられた、後転、つまり『後ろ向きでんぐり返し』で一回転してしまった。
母ちゃんは興味深そうに見ていた。

「母ちゃんが基礎から教えただけあるね。あたしてっきり、ピーン!ってなったオチンチンがつっかえ棒になって一回転して停まるのかと思った」

「母ちゃん・・・俺、糸巻き戦車じゃないよ。そんなことはどうでもいいけど、母ちゃん、それどういうこと・・・」

「だから、したことがないものはない。だってあたし23歳、大学卒業した齢からチコの母親代わりに頑張って、さびしい想い辛い想いさせまいって決めて・・・チコが立派な大人になるの見たかったはずの・・・命を懸けてチコを産んだフユミさんやノブヨシさん・・・色んな人に・・・恥ずかしくないようにって・・・チコがスクスク育つのがあたしも幸せで・・・。でも、あたし、自分の恋人なんて考える暇もなかったんだもん・・・。チコは何も悪くない・・・。あたし・・・あたし・・・チコが世界で一番大好きで・・・愛してる・・・大事なんだもの・・・」

母ちゃんは最初普通にしゃべっていたのに、途中からボロボロ泣きだした。
俺が生まれたときから知っていて、母ちゃんが俺の母親代わりになって17年、俺は母ちゃんと一緒にいるのだ。
俺は初めて、そういう一人の人間としての母ちゃんの人生の時間を想った。
感謝してもしきれないことを悟った。

「母ちゃん、俺を育ててくれて、本当にありがとうね。大学はちょっと遠いけど、たかだか4年だよ。それに、どこにいようが何をしていようが、俺は母ちゃんの息子だよ、死ぬまで」

「ウン・・・」

母ちゃんは涙声で鼻をかんだ。

「こんな母ちゃんでいい?こんな母ちゃんでもよかったら、ギュッってして・・・抱き締めて欲しい・・・」

「うん、母ちゃん、こっち側に来て」

俺は布団の中で母ちゃんを引き寄せて、背中に腕をまわして抱き締めた。

「母ちゃん、オッパイ吸っていい?」

「はい・・・」

俺は言葉にはしなかったけど、驚いた。
母ちゃんが俺に返事するとき、「うん」「わかった」「んー」くらいしか聞いたことはなかった。
落語が好きな母ちゃんは、たまに「おうよ!」とすら言う時がある。
まるで長屋の八っつぁんだ。

母ちゃんが俺に「はい」なんて、なんだか母ちゃんが年下の女性みたいだった。

俺は少しだけ布団に潜る形になり、母ちゃんの胸元に顔をうずめた。
母ちゃんが俺の頭を両手で包んで髪を撫でる。
母ちゃんの乳首を交互に、含んで少しだけ噛んでみた。

「おっぱい、出ないよ・・・出ないけど・・・吸って、ねえチコ、母ちゃん気持ちいい・・・」

切なそうな声が上から聞こえてくる。

「母ちゃん、本当に、いいの?母ちゃんと、セックスしても」

「・・・はい・・・」

母ちゃんはもう一度「はい」と言った。
俺は母ちゃんの上になり、抱き締めた。
何度かキスするうち俺はもっと激しく勃起していた。
母ちゃんがゆっくり俺を導くように脚を開き少しだけ膝を曲げるのが判った。

「母ちゃん、あのさ、避妊は・・・」

「大丈夫。母ちゃん大丈夫だよ。そのまま。お願い、このままあたしとセックスして、チコ・・・」

俺の先の部分が母ちゃんのオマンコの毛を少しなぞり、少しびっくりするくらい熱く濡れている部分に触れた。

「そう、そこでいいよ。大丈夫」

母ちゃんは何度も「大丈夫」と言う。
俺は俺の18年と半年くらいの人生と、母ちゃんの生きてきた人生を考えた。
大学卒業していきなり“親”として働きながら俺を育ててきた母ちゃん。
そんなことがなければ、恋もして、結婚もして、子供も授かっていたかもしれない。
本当はあったはずの母ちゃんの幸せを、俺がどこかに追いやってしまったのだろうか。

母ちゃんは一度だって、恨みがましいことも愚痴も言ったことはない。
いつも俺のそばで、俺が成長するのを喜んでくれて。
見守ってくれた。

母ちゃんがうんと愛おしかった。

(母ちゃんありがとう)

そう思って抱き締めるとそのまま、勝手に身体が前に進む、というか引き込まれるように俺は母ちゃんの中に包まれた。
母ちゃんは「あっ!」と声をあげた。

「母ちゃん、俺・・・」

「うん、チコにあげたの。母ちゃんの初めて。チコの初めてもあたしがもらった・・・幸せだよあたし。大好きで大好きで愛してるチコ・・・チコとセックスしてるの。あたしのチコ・・・」

「痛くない?」

「痛くないよ。全然痛くないけど・・・」

「痛くないけど?」

「ピッタリ。ピッタリで動けない」

母ちゃんは少し笑った。

「ね・・・もっと・・・奥まで来れる?」

「こうかな・・・」

俺は少し膝を曲げて少しだけ戻り、もっと奥に進んだ。
言葉で表現できない、何から何まで隙間なくぴったりで柔らかくて温かくて優しいものに俺の身体全部が入って、包まれてしまったようだった。
深く挿入したまま何度もキスを繰り返した。
母ちゃんは時折、苦しそうな、切なそうな声と表情で何度も呻いた。

「あ・・・もっと・・・ぎゅってして・・・抱き締めてて・・・あ・・・ああ・・・好きよチコ、愛してる、愛してる。愛してるって・・・言って・・・!」

「愛してるよ、母ちゃん愛してる」

「あっ・・・ああ・・・ああ・・・だめ・・・どうしよう、あたし・・・ああこれ・・・こんなになるの・・・あっ!」

母ちゃんはさらに強い力で俺に抱きついた。
腕だけでなく両脚も絡めて俺の膝と太腿をがっちり挟んだ。
その力が俺の腰にかかって一瞬、俺の両脚の力が抜けてしまった。
膝を少し曲げて脚の位置を戻そうとした瞬間、何の前ぶれもなく俺は射精してしまった。
俺も「あっ!」と声が出てしまう。

「どうしたのチコ・・・もしかして、出ちゃった?精子?」

「うん・・・いきなり、あっ、って思ったら・・・どうしたらいい?」

「そのままでいいよ、まだオチンチン硬いよ・・・ドキドキする。チコ、素敵だよ。母ちゃんに精子出してくれたの、嬉しい」

「ねえ母ちゃん、ホントに大丈夫なの?」

「うん、大丈夫。大丈夫だからこのままでいて」

いくらなんでも、ずっと母ちゃんを下敷きに寝るわけにはいかない。
俺はゆっくり母ちゃんから離れて横を向き、母ちゃんを抱いて横を向かせた。

「母ちゃん、ありがとう、今までありがとうね、少し離れて暮らすけど、俺はずっと母ちゃんの息子だよ」

「・・・はい・・・」

母ちゃんは俺の目をみつめて、また「はい」と言った。

優しい笑顔でそのまま目を瞑った。
母ちゃんにもう一度キスした。
俺もいつの間にか眠ってしまっていた。

起きるともう母ちゃんはバッチリ化粧をしていた。

「チコ、おはよう。ホラホラ、入学式入学式!」

昨日ガーメントケースに入れてえっちらおっちら持ってきた、よそ行きのスーツにブラシをかけている。

「うん」

いつもの母ちゃんで、いつもの俺だった。
いつもの通りなのだが、俺の目に映る母ちゃんがだんだん蜃気楼に包まれたみたいにぼんやりして、なんだか別の物に変わっていくような錯覚があった。

そうか、母ちゃんじゃない。

『自分の愛する女』だ。

俺は納得したような気がして、なんだか嬉しかった。
後ろから母ちゃんを抱き締めた。
母ちゃんも向きを変えて俺を見上げ、抱きついてきた。
何度もキスした。

「母ちゃん、セックスしたい。いい?」

「もう・・・入学式の朝に母ちゃんとセックスする男なんている?」

「いるよ、母ちゃんの目の前」

「目の前にはいないよ、うしろでしょ」

俺は貧しいながらそこそこにあった知識と記憶をフル動員して、母ちゃんのパンツを下げてそのまま後ろから挿入した。

「もう・・・チコ・・・まったくもう、昨日の今日でこんなこと・・・母ちゃんなんだかヘンになりそうだよ・・・あっ・・・」

きのうの夜は真っ暗だったが今は明るい。
台所のシンクに手をついている母ちゃんの形の良いお尻を掴んで、俺は本能半分、知識半分(笑)で前後に動いた。
母ちゃんの肛門がはっきり見えている。
そして俺のチンチンが、その下で母ちゃんのオマンコに突き刺さり、戻ってまた引き込まれるように母ちゃんに包まれる。

痺れるような感覚のまま頭のてっぺんがキリキリしてきてた。

「母ちゃん、精子出すよ。母ちゃんのオマンコの中に出すからね」

「うん・・・あっ・・・チコ・・・あったかいよ、オマンコの中・・・精子があったかいんだね・・・あっ・・・なんだか力が抜ける・・・あ・・・ああっ・・・」

母ちゃんはぐったり脱力して、辛うじてシンクに掴まっていた。

「これ・・・イクっていうことなのかな・・・身体がバラバラになりそうだった・・・まだ気持ちいい・・・」

パンツをたくし上げると母ちゃんは振り返り俺にキスした。
そしてしゃがむと俺のチンチンをしげしげと見た。

「うーむ、なるほど」

「なるほどって何・・・俺だけマヌケじゃない」

母ちゃんは俺のチンチンをピンッ!と指で弾いた。

「痛てててて、なに、もう、母ちゃん・・・」

「チコ・・・元気で暮らしてね、たまには帰ってきて」

「うん、母ちゃんも遊びにくれば」

「えへへ、いいの?うん・・・来る・・・そう言って欲しかったの。また軽トラ借りて、今度は冷蔵庫買うんじゃなくてドライブ連れてってね」

「ドライブは軽トラじゃないのがいいな・・・」

母ちゃんはキラキラ目を輝かせてるように見えた。

「寂しくないよあたし。うんと幸せだもの。あたしの人生万々歳、すこぶる付きの上出来だよ。チコが世界のどこに行っても、あたしはチコの母親・・・母親だし・・・女・・・」

「俺にとっては・・・」

「いいの、あんたは黙ってなさい」

そう言ってまたキスをした。

<続く>

近親相姦

Posted by Small Stone River