引き継いだ家庭教師先で出会った美しい母親[第1話]

Hな体験

〔体験談投稿者:Small Stone River 様〕

今よりずっと昔の話。

大学生だった俺はいくつかのアルバイトを掛け持ちでやっていたが、構内にある学食もそのひとつだった。

アルバイトはニキビ面の1回生から堂々たる大人に見える大学院生まで幅広くいたが、俺は蕎麦屋で働いた経験があったりしたため重宝がられ、比較的自由に時間を決めてもいい立場で働いていた。

ある日、仕事を始めた頃からの先輩格の上級生から「なあ、俺の受け持ってる家庭教師のアルバイト、引き継いでくれないかな?」と頼まれた。

その学生は有名な温泉地の、由緒ある高級旅館の跡取り息子だったが、親の方針らしく仕送りなどは一切無しで暮らしていた。

そいつが留学のため一年間休学する。
実は留学という名目で、世界的なホテルのチェーンを運営する企業に修行に出される。
それで俺に後釜を頼んできたのだ。

俺はそれほど家庭教師という仕事にモチベーションみたいな物はなかったし、高校生の頃に近所の中学生の宿題を見てやったり高校受験直前に少し教えたくらいの経験しかない。
が、世話になった先輩でもある。

「行ってはみますが、適性っていうのか、生徒と相性もあるでしょうし・・・ダメな時は他の人をあたってください」

そう言い、とりあえず家に電話をしてみた。
相手の家は引き継ぐ後輩の学生が来る、とだけ聞いていたらしい。

「娘も、楽しみにしてます」と母親は言った。

勉強を教える、教わるのに嫌々ながらも困るが楽しいことも別にないだろう、と俺は内心苦笑した。
良いならいい、ダメならダメと早く決めてもらわないと先輩に迷惑がかかると俺は思い、最初に行く日をそのまますぐ決めてもらった。
大学のある街から私鉄電車でひと駅、通いやすい場所なのが助かった。

行ってみるとそこはやや古めだが小奇麗な小さなマンションで、戸数も全部で30そこそこだったろうか。
インターホンを押すと母親と娘が同時に、「こんにちはぁーっっ!」と、こちらがたじろぐような声で迎えた。

「こんにちは、Fさんから紹介された・・・」

「Nさんね、よろしくお願いします、娘のマリコです、あたしは母のヒサコです、あたしの名前はどうでもいいか!」

母親は一人で喋り一人で笑った。
中学2年生の娘は明るく屈託なく、やはり笑いすぎるくらい笑った。
とりあえず俺はリビングに通されテーブルに3人で座り、俺があまり家庭教師の経験がないこと、不適だと思ったら遠慮なくそう言ってもらって構わないこと、などを伝えた。

母と娘は一瞬顔を見合わせ少し笑ったように見えた。

「全然大丈夫。ぜひお願いします。何も心配してません」と母親が言う。

「そう言っていただけるのはいいですが、授業というか、いっしょに勉強してみて・・・」

そう言いかけると母親は・・・。

「Fさんに何も聞いてないね?勉強はね、この子放っておいても適当にやるの。それは大丈夫なんだよ」

「はあ・・・」

「1年生のときの通信簿のコピーがあるから見て。あと2年になった1学期のテストの答案あるからそれも適当に見てね」

「はあ・・・」

俺は娘の一年生の学年通知表のコピー、2年の1学期の中間テスト、期末テストの答案を繰り返し見た。
そして内心頭を抱えた。

筆記科目はほぼ5、実技科目も4か5、音楽だけが3だった。

「音楽ね、あたし音楽の先生大っ嫌いで向こうもそうで、紙のテスト98点だけど3なの!」

娘が大笑いした。
答案用紙は見る必要がないくらい、高得点だった。

「勉強、好きなんですね。たいしたものですね」

「勉強?大っ嫌いだよ。ブロッコリーより嫌い」

「ブロッコリー・・・」

「そう、この子、勉強大嫌いだよ」

「勉強は嫌いで、どうして成績もテストも文句なしに良いんでしょう・・・?」

俺は心底不思議だった。

「勉強は嫌いだけど、負けず嫌いなの。あと理屈に合わないことが嫌なんだよ、この子」

「・・・学習塾に、行っているんですか?」

「行くわけないじゃん、勉強嫌いなのに」

親子で笑った。

「自学自習で・・・たいしたものですね。というか、それでも家庭教師が必要な理由は、もっと高度な内容や何か、ですか。そうなると僕では・・・」

「違うよ。さては本当にFさんから何も聞いてないね。この子、ときどき突拍子もないこと訊く、っていうか思いつくの。『人はどうして人か』とか『人間の生きる意味は』とかさ(笑)だから、勉強もいいけど、そういうのを一緒に考えて、話を聞いたり答えたり相手になってくれればいいの。先生なりの接し方でいいから」

「・・・それはもう哲学というか・・・」

「難しく考えなくていいよ。あたしね、にぎやかな家で育ったから、家の中で会話がいつも聞こえてるのがいいしね、そういうのでいいんだよ。もちろん勉強も教えてくれていいんだけど」

「しかし、それで報酬を受け取るというのは・・・」

「だから2、3回来てくれれば解るよ。本当、大丈夫。先生なら」

俺はどうも信じられず面喰った。
依頼する側がそれでいい、大丈夫というならそれでいいのかもしれないが、腑に落ちない。

紹介してくれた先輩にそう話すと・・・。

「そうだろ、不思議な子だし面白い親なんだけど、成績はいいし学習意欲もあるし、教え甲斐があるよ。俺、半分ふざけてSakiの原書渡して『わかるところだけでも読んでみて』って言ったら本気でちゃんと筋を追ってて『先生この本面白いね、笑った』って言ってビックリしてさ、まあ面白い経験だと思えば?」と言われた。

しかしやっぱりよく判らない(笑)

それでも週2回、2時間ずつ勉強を見た。
学校でやっている単元より先へ先へ、という勉強ならそれが勉強だが、何もしなくても最初から解るわけではない。
その点では誰も同じだ。

かけ算九九を生まれた時から言える子はいない。
どこかで初めて接して、頭に入れる、頭にしまう、頭から出す、という手順をやるかやらないかだ。
その点ではその娘もごく普通の子だった。

面白いのは母親だった。

勉強は子供部屋ではなくダイニングのテーブルでやるのだが、いつも横に座って聞いている。
口出しはしないが、俺の説明を聞きながら自分でノートをとっているときもある。
ジロジロ見たわけではないが、本棚に並ぶ本や文房具の揃い方でおおよその家の感じ、はっきり言えば学歴や教養、知的レベルといったものは想像がつく。
見当がつく範囲でなら、それらはおしなべて高い。

だからといって、こちらから訊く筋合いでもないし、家に配偶者、つまり娘の父親の気配も影もまったくないのも何か理由か事情があるのだろうと思った。

母親は「先生、あたしの仕事何だかわかる?ヒントなしで、月末までに当てたら賞品出します!」と高らかに宣言した。

娘はニヤニヤしていた。
俺は当初、教師かなと思ったが、通勤着が教職よりもう少しラフな気がした。

その月末、「図書館か、教育機関の事務職だと思います」と言った。

母娘は目を丸くし、「当たり!当たり!」と騒いだ。

「先生すごいね。両方当たり。あたし、御簾加戸大学の事務で今は図書館にいるんだよ。Fさんは『映画館でキップを売っている人ですか?』って、もうこっちが考え込むようなこと言ってたよ。どうして判ったの?」

「うーん、雰囲気ですかねえ・・・」

そう誤魔化したが、その大学の学内報が手提げからほんの少し見えていた時があったのだった。
『賞品』は娘が授業中に(笑)精魂込めて作った、俺のフルネームの消しゴムハンコで、それから長い年月、俺はそれを重宝して使っている。

夏休みになり、同じようなペースで勉強を見た。
エアコンがない俺のアパートに比べたら、涼しいマンションで時間が過ごせるのは実にありがたく、快適だった。
本来は、食事は不要というのが家庭教師の場合よく言われるが、俺は毎回、母娘といっしょに夕食を食べていた。
母親は料理が上手で、作るものはどれも美味かった。

「先生はホントにおいしそうに食べるね、食べさせ甲斐があるよ」

母親はいつも笑った。
娘の部活はソフトボールで、早朝から日暮れまで練習でまっ黒に日焼けしていた。

「ねえ先生、あたし部活の合宿でちょうど先生来る曜日が2回とも重なるから、次は再来週ね」

「はい、わかりました」

「それでね、ママがね・・・」

娘は少し不愛想に言いかけた。

「お母さんが・・・何ですか」

「はい、ママからどうぞ!」

「先生、落語聴きに行かない?」

「落語ですか」

「そう。落語聴いて、それから晩ご飯食べようよ」

「はい・・・」

「ママ、ズルイよ。あたしの合宿の日にちが決まってから落語のキップ・・・」

「うるさい、黙んなさいよ。次は3人で行くって話ついてるはずじゃん。なんで今になってむくれるの?」

「むくれてないよ。落語の後にご飯なんて今初めて聞いたよ。あ、わかったあそこのカレー屋さん行くんでしょ、階段降りていく・・・」

「うるさい、うるさい、黙って!次は3人で行くから!なによもう。ヤキモチ?」

「へー。ねえ先生、最近、ママね、先生帰ったあと機嫌が・・・」

「黙んなさい!黙らないと殺すわよ!」

「あんまり、揉めないでください。そんなに険悪になるなら俺、行かないほうが・・・」

「先生ゴメン、いいの。ママと落語に行ってきて。あたし血を吐いて前が見えなくなってまっすぐ歩けなくなるまでソフトやってくるから」

母親も娘も、落語を聴くだけあってか仕方話(身ぶり・手ぶりをまじえてする話)が巧い。
これは天性というか、おそらく姿が見えない配偶者、父親の影響だろうと俺は踏んだ。

本来なら娘と勉強のある曜日の夕方、俺は母親と地下鉄の駅で待ち合わせて都会にあるホールに行った。
ここは繁華街というより官庁街に近く、日常生活で用のないそんな地域に来ることは稀だった。

開演すると落語だけではなく漫談や漫才、結構な数の演目があった。
漫談は若い頃から名の知れていた落語家がやっていたのだったが、そのしばらく前に『業界団体』の揉め事で高座を飄然と降り、その時はスーツを着て漫談を披露していた。

俺は間近で落語を観る聴くのは初めてで、興味深くもあり面白かった。
前座、二ツ目と、やはり面白さ、巧さが違うのが素人でもわかる。

そしてトリは老練なベテラン。
俺でも知っている高名な真打ちが高座にあがった。
テレビで顔と名前を見聞きするくらいで、そんな噺家が目の前にいるのがすごかった。

噺が始まってほんの少しのタイミングで、母親がいたずらっぽく笑って聞こえるか聞こえないかの小さな声で、「あちゃ~」と言うのが聞こえた。

俺は不思議に思い、「何ですか?」というジェスチャーで彼女を見た。

目が合うと少し笑った。
そして俺の肘にそっと掌を添えて腕を寄せた。

落語は推理でもサスペンスでもないから、そのときの噺の粗筋を書いてもいいだろう。
というか、書かないとこの先が意味不明になる(笑)
ネタバレと言うならネタバレだ。

長屋住まいの、貧しいが仲の良い夫婦。
亭主は目と手先の器用さが要る仕事をしていて腕もいいが、あるとき目を患う。

仕事もままならず、金もなくなり二人して芋ばかり食べている。

これじゃ揃って日干しになっちまう、と女房は借りて工面した金で薬屋へ行く。

薬屋に亭主の目の病状を話すと、「この薬でたちどころに治る。よく能書きを読んで使え」と言われ、買って帰ってくる。

さて、昔の人のこと、効能書きの文章が読めない。
というか、読める字と読めない字がある。

二人して読めるところ、読める字を繋ぎ合わせてどうにか文にすると・・・。

『この薬は女の尻の穴、その皺につけるべし』と解読する。
(もちろん実際にそう書いてあるわけはない)

夫婦揃って首を傾げる。

「どうして、俺の目薬を女房の尻の穴の皺につけなきゃならないんだ」と訝しむがわからない。

そうこうするうち夜中になってしまい、誰かに訊くわけにもいかない。
仕方なく女房の尻をまくって塗ろうとするが、暗い上にそもそも亭主は目を患っているので手元が狂う。

「お前さん、場所が違うよその、違うよ上だよ」

「上って、こりゃどっちが上でどっちが下だ?」

「いや、だから、前っていうか後ろっていうか」

「こっちが前か?」

「そうじゃない、その後ろ」

「お前いっつも、『そっちじゃない』って言うじゃねえか」

「その『そっち』じゃない、いや、今日はそっちの『そっち』でいいんだよ」

などとやって弄り回すので女房はくすぐったい。
思わず笑ってしまう女房の尻が右に左に揺れる。

「くすぐったいよ、もっとそうっとやっとくれ」

「そうっと、やってるじゃねえか、そう腰を右往左往振るもんじゃねえ」

「そうっと、すぎるよ、もっと・・・」

「もっと、なんだい?」

「もっと、あ・・・」

女房は妙な声を出す。

「あんた、ちょっと今は薬は後回しにしようよ、なんだか」

「なんだか、なんだ?」

「なんだか、熱くなってきたよ、あたし・・・」

「どうして、今度はお前が風邪ひいて熱でも出たのか」

「だから・・・くすぐったくて・・・あっ!」

亭主と揃って芋ばかり食べていた女房はオナラをしてしまう。
その勢いで、尻の穴の皺に塗った粉が風に舞って亭主の目に入る。

「なるほど、こうやってつけるんだ」がサゲである。

俺は涙を流さんばかりに笑った。
さすが、真打ちは違う。

この演目はテレビやラジオの中継や収録ではないからこそだったのだろう。
当時だって電波には乗せられない噺だったはずだ。

ホールが明るくなり客は席を立ち始めた。
噺家は高座からひかず、何度も客ににこやかに頭を下げていた。

俺は心底、楽しい気持ちになってホールの外に出た。
涼しい風が吹いて心地よかった。

母親は、「先生、腕組んで歩いていい?」と訊いてきた。

俺が左肘を少し持ち上げると、母親は腕を添えて組んだ。

「あたしあの噺、知ってたからさ、あ、エッチなのが始まっちゃったよ、どうしよう、って思ったんだけどもう聴くしかないから、ちょっとドキドキしてたんだけど、先生、大笑いしてるから安心した。面白かった?」

「落語、直に聴くなんて初めてで、すごく面白かったし、いい経験しましたよ」

「そう?ならよかった。でも・・・エッチな筋だったでしょ」

「エッチって・・・でもまあ、たとえ子供だって『大人なのに、説明書を読み間違えて目薬をお尻に塗っちゃうなんてバカみたい!』って笑うでしょ、子供には聞かせないと思うけど・・・」

「それにしても先生、ゲラゲラ笑ってたね。そんなにおかしかったの?」

「ホールにいたお客さん、みんな大人な訳で、そうだと、その人の人生で、あの噺を聴いて『目に浮かぶ光景』がきっとあって、みんな思い出してるだろうな、ってふと思うと、お客さんの数だけ、そういう場面があると思うとなんだかおかしくて、笑えて・・・」

「じゃあさ、じゃあさ、先生は先生の経験と記憶があって、何が思い浮かんだの?」

「う・・・」

俺は言葉に詰まった。

「へへ、誘導尋問みたいだね」

「う・・・」

「この間、マリコと大きい本屋さんに問題集買いに行ってくれたでしょ、そのときあたしマリコに前もってチョココロネ、賄賂に渡して『先生に恋人いるかどうか尋問してきて』って言ったのに、『締め上げたけど、先生、頑として口割らない』ってマリコが悔しそうに言うからさ・・・」

「訊かれましたけど、『いません』って正直に自供しましたよ」

「いないの?」

「いません」

「ふうーん、あたし、今ヤキモチ妬いてんだけど」

「そんな、いま俺は恋人も何もいないのにどうして・・・。そもそもお母さんがヤキモチ・・・」

「お母さんって言うのやめて。だから、そういう過去があるから、先生なりに思い浮かぶ景色があるんでしょ、なかったら想像するしかないじゃない」

「・・・昔のことはね・・・」

「なによ、先月20歳になったばっかりじゃない!」

俺はうっかり自分の生まれ年を言うとき年月日を全部を言ってしまい、誕生日を過ぎた最初の日の授業のとき盛大に家で祝ってもらったのだった。

メニューはベタにケチャップで『20year sold』と描いてあるオムライスと湯豆腐だった(笑)
母娘は俺にネクタイをプレゼントしてくれた。
娘が作ってくれたマシュマロは何かが間違っていたらしくハンペンのような味がしたが、俺は嬉しかった。

母親は大きな声で笑い、もっと強く腕を組んできた。

「先生、こないだマリコが口すべらしたからもうバレてるけど、晩ご飯食べようね。カレー。辛いけど」

母親は勝手知った感じで歩き、やはりビルの地下へ階段を下りて入るカレー屋に入った。

日本人の思うイメージのカレーライスではないカレーだと知ってはいたが、店に入るのも食べるのも初めてだった。

「知ったかぶりは、しないけどね、あたしがだいたい決めていい?足りなかったらもっと食べよう」

俺たちは何種類かのカレーとインド風の総菜副菜を食べ、ナンと黄色いご飯を食べビールを飲んだ。

「はい、ビール。先生、立派に成人だしねえ(当時の成人は20歳)」

母親は楽しそうだった。

「これ、みんな本当においしいですね」

「ホント?ならよかったな・・・ねえねえ、まだ追及の手は緩めないよ(笑)先生、恋人いたんでしょ?今はいなくても」

「・・・昔のことは・・・」

「またそれ言う。やっと20歳なんだからつい最近じゃないの?」

俺は母親に向き直った。

「嫌な思い出じゃないし、話してもいいですけどもう過去のことだし、お別れした人もみんないい人です。幸せでいてくれればいいな、とは思うけど、それ以外の感慨はないです。わかってもらえますか?」

「・・・うん・・・」

母親は少し視線を下に向けた。

「ごめんね、嫌な気持ちになった?あたしのこと嫌いにならないでね」

「いや、嫌いもなにも・・・どうしてですか?そういう話にこだわりがあるのは・・・俺が訊くことじゃないですけど」

「あのね、マリコもね、・・・マリコもあたしも、大好きなの。先生。最初ウチに来てくれた日から、大好き。なんでか、わからないよね」

「・・・わかりません」

「先生だから話すけど、あたしもマリコも“視える”ときがあるの。AさんがいてBさんがいて、AさんとBさんには見えないCさんが見える、とかじゃないよ」

少し真面目な表情になった。

「AさんやBさんの後ろに『別の人』がいる、とかでもなくて。“その人がどういう人かなんとなくわかる”って言えばいいのかな。説明が難しいんだけど」

「はあ・・・」

「色っていうか、赤や青や黄色なら“説明”できるじゃない、同じ色の物なにか指差して。そういう説明ができないんだよ。模様、って表現すればいいかな?ってマリコは言ったことあるけど、模様なら紙に画で描けるじゃない。そういうのでもない。『感じる』ことをきっと心が色みたいに思ったり模様みたいに思ったりする、ってことなのかな」

「はあ・・・」

「先生がさ、ある日、黒と白しかない世界に迷い込んでさ、空から白い雪は降るけど怪我すると黒い血が出るの。白と黒とその中間しかない世界に行ったら赤や青や黄色の説明はできないじゃない。そんな感じ」

「はあ・・・」

「視えてもね、困るときもあるから、普段はあんまり“視ない”ようにしてるから、そんなに意識しないの。でも初めて会う人とかは、やっぱり多少気になるじゃない。勉強教えてもらう人とか、身近にいる人とか」

「はあ・・・」

「先生は、『僕はどう視えるんですか?』って訊かないの?」

「いや・・・どう視えても思われても自分では変えようがないし、聞いても聞かなくても同じような気がして・・・」

「そうなんだよ。そう言うと思ってた」

母親は笑った。

「先生はね、今の先生そのままの人。飄々としてるけど色んなことを深く考えてて、人の気持ちを思いやるし想像力があるから、優しい人」

「はあ・・・」

「あとねえ、訊きたい?」

「ここまで聞くと・・・なんか妙ですね、教えてください」

「今日ね、マリコ抜きで来たのはそれが話したかったから。ズバリ!」

「ズバリ、なんですか・・・恐いな・・・」

「コワくないよ全然。先生はね、すごくエッチなの。自分でもわかるでしょ」

「エッチ・・・どういう意味なんですか・・・」

「隠せないよ。わかるんだあたし。でも、エッチっていうのはね、“気持ちとセックスがピッタリ同じ”っていう意味。先生がセックス、すごく好きなのわかる。でもそれは“大好きな相手と、ぴったりくっつきたい、触れたい”っていう気持ちの先のセックスなの」

母親は優しい表情で続けた。

「だから大好きな人以外はなんとも思わないと思うよ。風俗にも行ったことないだろうし、これからも絶対行かない人。『そういうことは良くないこと』だからじゃなくて、『どこかの知らない人』だからそんな気持ちにならない、ってこと」

「・・・はあ・・・」

「まあ、あたしが勝手にそう思ってるだけかもね。別にそうですとか違いますとか、答えなくていいよ」

「・・・まったくもって、その通りですね」

母親は爆笑した。

「ね、先生そう言うかな、って思ったけどやっぱりそうだった」

「紹介してくれたFは、どうでしたか?」

「常識と良識がちゃんとある普通の人だよ。オットリしてるのはやっぱり、育ちがいいんだろうね。ただちょっと線が細すぎて、他人事だけど心配だよw立派な旅館の跡継ぎなんでしょ?」

「アメリカに丁稚奉公に出されますから、1年くらい経てば鍛えられてるかもしれませんね・・・」

俺は特段、不思議でもなく奇妙でもなく、聞いていた。
俺にはそういう感じ方はあらゆる感覚において皆無だが、実はそういう人は意外と身近にいるのかもしれないと思っただけだ。
『エッチ』と思われてもそれは害や恐怖を与える筋のものじゃないし、どう言われても別に構わない(笑)

「・・・初めて、お家に来たとき母娘で笑ってたのは・・・」

「そう。すぐわかったから『この先生でよかったね』って思ったの、二人ともね」

母親は風変わりな、インドの物らしいビールをもうひとつ注文した。

「お酒飲めるけど飲まない人だね」

「・・・そうですね」

こういうとき、説明しなくても判っているのだろうか。
それはそれで面倒くさがりの俺には助かる。

「先生は余計なこと訊かないね。別に何を訊かれてもいいけど、普通の人なら訊いてくることも訊かない。でも話せばどんなことでもどれだけでも耳傾けて聞いてくれるってマリコもすごく嬉しいんだよ・・・」

「普通の人なら訊くこと・・・ってなんでしょう?」

「お父さんはいないんですか、どうしていないんですか、とかさ」

「どうしても訊く必然があれば、ですけどそれがない以上、家庭教師の立場では興味や関心は、仕事のことに限られると・・・」

「なんかつまんないよ。もっと話、したいけどな・・・」

「・・・」

「先生、これ食べて」

インド風なのだろうか、玉ねぎのかき揚げのような料理をフォークで軽く刺し、俺の口の前に持ってきた。

「先生、あーん」

俺がそのまま食べると、「マジメな顔で食べてくれて、いいな」と笑った。

「あたし、46歳だよ。まったくもう、あと3、4年で100年の半分なんて・・・」

「35か36歳くらいかなと思ってました」

「嘘だね(笑)微塵も思ってないでしょ」

「思ってます。大学卒業してすぐに娘さん生まれたくらいかなと・・・」

「あたしね、少し年上の従姉のお姉ちゃんいるんだけど、そのお姉ちゃん、初産が18歳と10ヶ月。大学一年生だったんだよ。妊娠判ったの、高校3年の秋。あたしも母親から『マユミちゃん、赤ちゃんできたんだって!!!』って聞いて『高校生でしょ?!マユミお姉ちゃん?!』って・・・」

「・・・うわあ・・・すごい人生ですね・・・」

「それがまだ先あるの。産まれたその子のお父さんとは大学入ってすぐ入籍したんだけど、お姉ちゃんが大学3年のとき彼は会社の仕事で事故で死んじゃったの」

「・・・え・・・」

「後はお姉ちゃんと、それぞれのお父さんお母さんたちが5人で一致団結して育ててね。一人娘はアメリカの大学行って、今もアメリカにいる」

「・・・なんというか・・・そんなこと、本当にあるんですね・・・」

「話はまだ終わんないよ(笑)そしてね、お姉ちゃん、40歳のときもう一度妊娠して、41歳で二人目を生んだの。女の子。長女と次女で22歳違いって、完全に親子でしょ」

「いやもう、なんていうか・・・その2番目の子のお父さんは、当然別の人・・・」

「そう。当たり前だけど別の人。二女、つまり40過ぎて産んだ女の子のお父さんね、自分の産んだ長女と同い年なの。自分の娘と同じ年の男性と結婚したってこと。もうややこしいでしょw4人でウチに遊びに来たときね、完全に“お母さんと娘夫婦と孫”にしか見えなかったよ。でもみんな仲良しで楽しそうで、すごく幸せそうだった」

まったく事実は小説もマンガも映画もドラマも軽々と追い越すようなことがあるものだと俺は思った。
意外と傍からわからないだけで、世間には色々あるのかもしれない。

「お腹いっぱいだね、出ようか」

「おいしかったですね、また来たいな」

「本当?本当?また来ようよ。マリコもここのカレー大好きでね、連れてくると鼻血出すくらいの勢いで食べる」

上りの階段は外に向かってスパイスの香りのする風が後ろから当たる。
日の暮れたビル街は涼しかった。

母親はまた俺と腕を組み地下鉄の駅のホームを歩いた。
時折すれ違う人たちには『どういう組み合わせ?』といった風の目で見る人もチラホラいたが、俺はどうでもいいので気にならない。

「結構、見られるね、あたし達。どう見えるんだろうね?」

「どうであってもいいですね、よその人は」

「そうだね・・・従姉は娘と同じ年の男性と籍入れるとき役所で、『この方の生年月日は合っていますか?』って何度も念押されたって笑ってたし、娘は娘で『ママの恋人ってどんな人だろう、って思って楽しみに日本帰ってきたらあたしと同じ年』って涙流して笑い転げたんだって。そんなの、自分たち次第だよね」

「そうですね」

地下鉄の乗り換え駅がそろそろだ。
俺はここで乗り換えて私鉄に乗る。

「・・・それじゃあ、おいしいカレーごちそうさまでした。落語楽しかったです。来週は・・・」

「先生、ねえ、帰らないで。我儘言って悪いけど、帰ったら嫌だ。いっしょにウチに行こう、お願い」

電車の中で押し問答する気もない。

『できる、できない』『そうしたい、したくない』なら、『できる』し、『そうしたくない』わけじゃない。

俺はそのまま降りずに母親と最寄駅まで乗り、マンションに着いた。

部屋で母親は、「もう少し、お酒飲んでいいかな。あたし、ワイン少し。先生は飲まないね」と言い、切ったチーズを少し食べながらワインを飲んだ。

俺はチーズが大好物なのでチーズだけ食べていると、「チーズ好きなんだ!へええ。それならもっと切ろう」と、冷蔵庫から余分に出して切ってくれた。
アメリカの、猫と鼠の追いかけっこもののアニメで見かける三角形のあのチーズだ。
初めて見て初めて食べたが旨いので遠慮なく食べた。

「先生、あたしのあげる」

母親は人差し指大のチーズを唇にそっと咥え、俺に顔を近づけてきた。
俺も唇だけで受け取ってチーズを口に含んだ。

少し唇が触れた。

「ヤじゃない?」

「嫌じゃありません」

「嬉しいけど、いいの?」

「いいです」

「そう、嬉しい」

お互いチーズを噛んで飲み込むタイミングでキスした。
抱き合うと彼女のブラウスから少しカレー屋で嗅いだスパイスの匂いがした。

「マリコに内緒にしてね。でも判るだろうなー」

2度、3度強く抱き合ってキスを重ねた。

「ドキドキする。久しぶりだな。こんなの。嬉しい。ギュってされるの、好き」

「お母さんは・・・」

「お母さんって呼ぶのヤメて」

「ヒサコさん、ですか」

「うん・・・まあ・・・いいかな」

「ヒサコさんはカッコいいですよ。スタイルもいいし、何か運動続けてるんですか?」

「水泳やってるよ」

「水泳・・・カッコ良さそうですね」

俺はもっと抱き締める力を強めてキスを何度か重ねた。

「シャワー浴びようか、ね」

マンションはユニットバスかと思っていたら、意外にも広い。

「このマンションに決めたのはね、不釣り合いって言う人もいるくらいお風呂が広かったからでね。マンションの顔見知りの人も『そろそろ引っ越そうと思う気持ちもあるんだけど他所のを見てもお風呂が狭くて越す気にならない』って」

「俺はお風呂屋さん行くから、逆に広すぎて落ち着かないですよ」

「ウチでお風呂入っていけばいいんだよ、ね」

屈託なくそう言い、そのまま着ているものを脱いだ。
締まった体つきでお尻の持ち上がり具合がカッコよかった。

胸は大きいとは言えないが、形がいい。

「なんか、当たり前みたいにハダカになったね。なんていうことないでしょ?そういう気持ち・・・ならないよね」

少しだけ不満そうな、寂しそうなニュアンスを含めた声だった。
裸になっていた俺はそのまま、脱衣所からバスルームへ左脚だけ入れて彼女を抱き締めてキスした。

彼女の右脚は風呂場、左脚は足拭きマットの上にある。
5センチほど右足が下がっているから体が右側に傾く。
俺は相手の左脚の太腿を抱え膝裏に右手をかけ、持ち上げた。
彼女は両手で俺の両肩にぶら下がるようにしてバランスをとる。

「あっ・・・どうするの、脚・・・あっ、あっ・・・」

スクワットに近い形で俺は両膝を少し曲げて体の位置を下げる。
ちょうど彼女の顔が前に来た高さのまま膣口をさぐり、両膝を伸ばすタイミングでひと息に根元まで挿入した。
母親のオマンコはサンオイルでも湧いているかのように濡れていた。

「ああっ・・・エッチだよこれ・・・立ったまま・・・息できない・・・」

少し抜き、少し戻り、また挿入する。
繋がった部分から音がする。

「・・・ドキドキする・・・こんなエッチな・・・でも好き・・・これ好き・・・先生・・・ああイク・・・イク・・・このまま・・・」

俺の背中で掌を組み、それをぐっと引き寄せてさらに力をこめて俺に抱き着いた。

「イクよ・・・いい・・・深くして・・・」

少し止まって、勢いをつけて奥に突き立てるのと同時に左手で彼女の右の腰骨をがっちり押さえ、手前に引き寄せて風船をしぼませるような形で思い切り力を込める。

痙攣のように波打った彼女の腹筋が2回、3回と跳ねた。

「ああ・・・先生そのまま・・・そのままギュって抱いてて・・・あっ・・・まだ硬いよ・・・熱い・・・先生のオチンチン・・・」

ゆっくりゆっくり、右手で持ち上げていた彼女の膝の裏を下ろし俺自身も抜いた。

そのまま俺はしゃがみ、外に溢れた体液で光っている彼女のオマンコの毛を分けて、小陰唇を拡げクリトリスを唇で挟んだ。
少し離し、舌先で円を描くようにクリトリスを舐めた。

勃起している彼女のクリトリスの根元の包皮がめくれて、そこからまた押し出される体液が垂れる。

右まわり、左まわりと数回くり返して舐める。
膣口からは蛇口を捻ったように体液がまた出て糸をひいて下に垂れる。

「ああ・・・いく・・・また・・・いく・・・先生・・・」

俺の頭を強く押さえ、髪をくしゃくしゃにしそうな勢いで掌に力が入るとまた弓なりに上体を反らせた。

「あ・・・立てない・・・力が入んないよ・・・シャワーしてからって思ったのに先生・・・だめだあたし、敵わないよ、降参」

二人でゆっくり、シャワーを浴び、俺はスポンジで丁寧に彼女の身体を洗った。

「きれいな背中、お尻もカッコいいですね」

彼女は大きく息をしながら、ゆっくり喋った。

「わかるよ。先生には女の人がたくさんいる。みんな、年上の人。安心してよ、ちゃんとみんな生きてる人だよ。先生のことね、元気でいて欲しい、幸せでいて欲しいって思ってる人たち。先生もその人たちにそう思ってるから、通じるの」

「ふうん・・・」

「先生、あたしのこと好き?」

「大好きです」

「ありがと。嬉しいな」

風呂から出て彼女はガウンを羽織り、俺はトランクスだけでベッドに入った。
寝室代わりの部屋は母と娘で使う和室で、普段は母親が床に布団を敷いて寝るらしい。
一度も戸が開いたのを見たことがなかった部屋に初めて入る。

「別にこの部屋、入ったり見たりダメっていうのじゃなかったんだけど、先生来るとき大急ぎで洗濯物放り込んだり、パンツが落ちてたりするからね・・・」と笑った。

居間とは違う匂いがする。

「マリコのベッド使ったら怒られるから、あたしの布団でいい?」

「いいですよ・・・」

俺たちは床に敷いた布団に入った。

「こんな風にしてるの、不思議だなあ。ついこの前ウチに初めて来た先生なのにね」

「そういうものですか・・・」

「だってさ、どんな人でも、もうこんな間柄になることなんてないかな、って思ってたし」

「俺もそうです」

「先生は、この先どんなことだって起こるし選べるじゃん!」

「この先のことはまだ来てないし、起ってません」

「誰かとおんなじこと言うなあ・・・面白い」

「・・・誰ですか」

「マリコの父親。もういないけどね。どうしたもんだか、あたしを含めてウチの親族は女の人が強くて、そういう家系なのかな」

「・・・そうでしたか。詮索するようなことは嫌だったから・・・」

「まあ、なんていうこともないよ。でも正直言うとね、あたしもマリコも寂しいときあるんだよ。だから男の人がいればいいっていう簡単なことじゃなくて、ね。なんでも話せてなんでも聞いてもらえて、そんな、ね」

少し間を置いた。

「マリコなんて『先生って、あたしと6歳しか違わないけど、なんだかすごい歳上の、なんだかそういう大人の人みたい』って言うの。あたしだって、ふと自分の方が年下みたいな錯覚するときある。なんでだろうって思うけど、なんだかホっとするの」

部屋はほとんど真っ暗だった。
おそらく母と娘の寝室でもあるから、遮光のカーテンをつけているのだろう。
腰窓のほんの隙間から見えるか見えないかのぼんやりした外の灯りが入るくらいだ。

「今日聴いた落語、艶噺っていうのかもしれないけど、なんだかちょっと幸せな気持ちになりませんか?」

「うん、そうだね。きっと風で舞った目薬でダンナの目も治って、また仕事もできて、幸せだろうな、って思い描くからかな」

「ね、『仲良し』だから、こんな風に・・・」

俺は彼女をゴロンと転がして腹這いにした。
まるでそうされることを判っているかのように、母親は両手をまっすぐ伸ばして素直にうつ伏せた。
俺は彼女の膝をつかせたまま腰を持ち上げ、『猫のポーズ』のように上体を布団につかせた。

「ふうー」

母親はゆっくり息を吐いて、膝を少し屈め、もっとお尻が上になる位置に動いた。
俺は彼女の水色のパンツを膝の少し上まで下げ片膝ずつ抜いた。
くるぶしを抜けるとき、母親は協力的(笑)に足首を揃えた。

「なあに?目薬とおんなじ?」

布団に片頬をつけて横を向いて笑った。

「今の時代、目薬が粉っていうのはないですねえ・・・」

俺はお尻を掴み、左右に広げる向きで力を入れた。
暗くてわからないけど、だいたいの場所で見当をつけて舌を出した。
そのまま探り当てて肛門をゆっくり舐め始めた。

「あっ・・・あっ・・・それは・・・恥ずかしいよ、そんな・・・そんなことあたしにしたいの・・・?お尻の穴・・・そんなに舐めないで恥ずかしいよ・・・あっ・・・あ・・・はあ・・・あっ・・・」

見えないが位置がわかってきたので俺は肛門と膣口の間に何度も舌を這わせ、往復した。
膣から甘酸っぱい匂いが強くしてくる。

お尻を押さえていた手を太腿の間にまわして、オマンコの毛をそっと左右に除けながら小陰唇を親指、人差し指、中指で押さえて摘んで開いた。
膣口から空気の漏れる音がした。

「ああ・・・そんなところ・・・引っ張らないで・・・イジワル、もう恥ずかしいよ・・・あたしだって恥ずかしい・・・イジワルしてるでしょ」

「じゃあ、やめる・・・」

「・・・やめないで。お願い。やめないで」

「どうしてほしいか、言って」

「・・・な・・・めて・・・」

「どこ?」

「・・・お・・・お尻の・・・お尻のあな・・・なめて」

「ヒサコのエッチなお尻?」

「そう・・・エッチなの・・・あたしエッチなの・・・」

「エッチなことされて、嬉しい?」

「うん・・・嬉しい。うんとエッチにされたかったの・・・いつも・・・」

「いつも、何?」

「先生が来て、マリコと勉強してるとき・・・先生の声聞いてると濡れるの。すごく感じてたの。だから・・・勉強いっしょに聞いてるテーブルじゃなくてキッチンの方に椅子あるから・・・すぐそばで・・・」

「そばで、何?」

「先生のすぐ横で・・・オナニーしたときもある・・・声出ないように・・・我慢して・・・」

「エッチだね。二人が勉強してるのに、横でどんなオナニーしてたのか言って」

「・・・クリトリス・・・触って・・・オマンコ・・・オマンコに指入れるの。奥まで・・・入れて、イキそうになったら止める・・・その指を舐めてまたクリトリス触って・・・イクの。声、絶対出さないように・・・」

「どうして欲しい?」

「オチンチン入れて。さっきみたいに、入れて・・・」

「どこに?」

「オマンコ。オマンコに入れて」

「誰の?」

「あたしの。あたしのオマンコに入れて。お願い。おかしくなりそう・・・」

「ヒサコのオマンコに、オチンチン入れてください、って言ってごらん」

「オチンチン、入れてください。ヒサコのオマンコにオチンチン入れてください、入れてください」

俺はまた腰を挟む形で両手で左右から押さえ、後ろから挿入した。

さっき抱き合って立ったままの時と向きが変わり感触が違う。
何回か往復を繰り返し、止める。

「やめないで・・・やめないで入れて、お願い」

俺は手を上に伸ばし、手探りでペンダント灯の紐を掴んだ。
床で寝る人がいるときにありがちな、伸ばす紐が結び足してあるから位置が低いのだ。
俺は紐を引き電気を点けた。

「あっ、明るいよ、どうして明るくするの」

「ヒサコの、エッチなお尻の穴がよく見えるよ」

「いじわる、そんな・・・」

「ね、正直に言って、落語訊きながらエッチな想像してたでしょ」

「・・・うん・・・した・・・」

「どんな?」

「あたしが・・・あたしがお尻捲られて先生に・・・お尻の穴もオマンコも全部見られて・・・お尻の穴も触られるところ・・・想像した・・・」

「ひとりでエッチな気持ちになって聴いてたの?」

「・・・うん・・・いっぱい濡れて困った・・・ホール出る前にお手洗い行ったのはもうパンツビショビショで困って・・・あたし一人でエッチになっちゃってなんだか寂しくてさ、どうしても一緒にいて欲しかったの・・・だから・・・」

「うん・・・」

俺はさらに往復の間隔を短くした。
むず痒い射精感の前触れみたいなものが頭のてっぺんに来る。

「先生・・・イキそう・・・イキそう・・・あ・・・」

「俺も、出そうだよ・・・どうする?」

「お口にちょうだい。先生の精子飲む。全部飲むからちょうだい・・・」

母親のオマンコから離れ腰を支えていた両手を肩にまわし上半身を半回転させる。
シルエットで見える鼻筋を確かめ先端を唇の上でなぞらせると、彼女が亀頭を含み一気に深く咥える。
ほんの少しだけ耳のあたりに掌を添えて俺は射精した。

2回、3回と自分がしなって反る勢いのまま、喉深く精液を注いだ。

「んん、んん」

口を開けずに母親が呻く。

「まだ、飲み込んじゃだめ。オナニーして」

正座の形になり、俺のものを深く咥えこんだまま左手で膣口を弄り、中指を入れたり出したりしながら右手の中指でクリトリスの周りを円を描くように撫でた。

「んん・・・」

俺は彼女から離れた。

「イクときに、飲み干して。ゴクゴクって」

「・・・」

鼻から強く息を吐き、また鼻から強く吸い、喉元から喉仏が上下に動く。
嚥下する音が響く。

「あ・・・イッた・・・イッちゃ・・・った」

そのまま俯くように真下に顔を向けて両掌を布団につけた。

「ああ・・・好きよ・・・先生好き・・・まだ・・・ドキドキする・・・」

母親の形のいい胸と乳首の影が太腿の上に薄っすら見えて、ゆっくり揺れている。

<続く>

Hな体験

Posted by Small Stone River