体操着と小さなおっぱい

純愛・青春

小5の図工の時間だった。
運動会の絵を描いてた。
俺はものぐさなので、体操着の胸の学校のマークとか、肩と袖のラインのとこを省略しまくって描いていた。
それを隣の女子に指摘された。

俺は、「うるせー!これからちゃんと描く!」とあしらって、やっぱり手抜きしてた。

体育じゃなくても体操着を着てる子はよくいたけど、その日、その女子は体操着だった。

「体操着はこんなだよ、見ながら描いたらいいよ」

そう言って、俺の方に体の正面を向けて胸を張った。
乳首がぷっくり浮き出ていた!
おっぱいはないけど。
やらしいっていうか単に滑稽で、俺は「ブフ!」と吹き出して、「何じゃそれー」と言いながらじーっと見てたら、その子が気付いて真っ赤になって慌てて胸を隠そうとした。

「何だよ、隠すなよー」

俺は乳首を指でぎゅうっと押してやった。
軽い冗談のつもりだった・・・。

「痛ったああいいいいいい!」

いきなり泣き出した!
オロオロする俺と泣いてるその子に注目が集まって、先生もやって来た。
その子は素早く自分の腕を、爪の跡がつくくらい強く自分でつねった。
そして先生に腕を見せながら、俺につねられて痛かったんだと言った。
俺はキツく注意されて、その子と席を離された。

女子にとって乳首があんなに恥ずかしくて痛いもんなんだと知って猛烈に反省したものの、「乳首、触ってごめん」と謝ることすら、その子にとっては恥ずかしくて耐えられないんじゃないかと、さっきの偽装工作を思い出しながら思った。

その後、友達がひとり減ったことを実感してちょっと泣きそうになりながら、俺は体操着をきちんと細かいところまで描いた。

「頑張って描いたね」

先生がそう言ってくれたけど、あの子からは何もなかった。
そして体操着とかTシャツ一枚とか、そういう恰好で学校に来ることはもうなくなった。
俺はその子に何を話せばいいのか、今まで何を話して仲良くしてたのかもわからなくなって、ずーっと気まずいまま何年も過ぎていった。

高校生のとき、俺に彼女ができた。
おっぱいの大きさをさりげなくアピールしてくる彼女だったけど、あの思い出のせいで、おっぱいを腫れ物扱いしてしまう俺は、いまいち手を出せないでいた。
でも、いずれそういう日はやって来る。
彼女の右の乳首のそばには薄い痣があった。

「あの時、ぎゅっと押したせい?」

俺はオドオドした。

「青痣が残るほど強くされてないし、何年も跡が残るわけないし、そもそも触られたのは反対側」

さらに、あの時に自分の腕をつねったのは、恥ずかしかっただけじゃなくて、俺がセクハラ男にならないようにっていう彼女の気遣いでもあった。
その話を聞いて、ちょっと泣きそうになった。
そして、どっちのおっぱいを押したのか覚えてない俺に、「2回目は覚えといて」と言って、彼女は笑った。